Hatopia詩とものがたり

鳩子のホームページ 2004年夏

しょーと・のんふぃくしょん

魚少年

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魚少年

 太古の昔に、異常に暑い夏が何百年も続き、海面が数十メートルも上昇したころ、草原は深い入り江に変わり、住む場所を失った類人猿たちの一部は、水中での生活を余儀なくされました。
 もともと前かがみで歩いていた類人猿たちでしたから、最初は犬かきのような泳ぎしかできませんでした。でも、だんだん上手な泳ぎ方をおぼえると、彼らの後ろ足は次第にまっすぐと伸びてゆき、両足を少し動かすだけで強い推進力を発揮するようになりました。両足は太く発達し、腕は細く短くなってゆきました。
 泳ぐのに邪魔な体毛はなくなり、滑らかなツルツルの肌になってゆきました。呼吸をするために頭は水面に出しますから、髪だけは残り、泳ぎに慣れない赤ん坊は、母の丈夫な長い髪にしがみついて、どこへ行くにも一緒でした。
 沖縄の古い伝説では、最初に島に現れた姉弟は、魚の交尾するのを見て、それをまねて子孫を残したといいます。魚の交尾は卵子と精子を外に放出するものもありますが、おなかとおなかを接しあうのもあります。姉弟は正常位または互いに向かい合う体位をとったことになります。水中の類人猿たちも、水中の仲間と同じように、向かい合う体位をおぼえてゆきました。体毛が薄く皮膚が敏感となった人類は、皮膚をより多く密着させることで互いの愛を確認しあうようになりました。
 もともと植物性のものを食べていた類人猿でしたが、長い年月の間には食糧不足に直面することもありました。彼らは、飢えをしのぐために、仲間であった魚たちを食べました。そのような悲しい罪の意識を感じて、初めて類人猿たちは人類と呼べるようになったのかもしれません。
 食べられた魚は神となり、人は神の子、すなわち魚の子になったのです。人だって大きな動物に食べられるかもしれません。そして魚を愛する神の子たちは、神に近づこうとしました。魚の中で最も神々しかったのは、性転換する魚たちでした。
 神々を祭る庭では、すべての人たちが性転換して神々を祝福し、神々は美しい少年の肉体に降臨し、少年を少女の姿に変えました。