鳩子の詩集 - 30    

思い出の少年

 ちょっとした昔話だったのに、まだ年端も行かない少年が、思い出を懐かしむあまりか、涙を浮かべている。幼い弟の涙を見て、思春期の姉は、不思議そうに感じながら、離れた場所でやさしくじっと見つめている。そんな幼い日の光景がまぶたをよぎります。自分がどこにいるのかもわからないまま、何もかもが遠く過ぎ去って行くとき、たとえ涙の一粒の中の大海原であっても、一気に泳ぎ切ってしまいたい衝動に駆られます。
 なにげない昔話に涙ぐむ少年のわれを愛しむ姉は