(1) 「T?」の用語

 ある人に「T..という言葉がたくさんあるけどなんなの」と聞かれたので、ここで GID や T? という用語についての簡単な説明を試みました。
 これらは"TG"を除いては医学関連の用語で、〜症、〜障害といった一種の病名であり、医者が診療・治療のためにそう呼ぶ言葉なのでしょう。それによって精神的肉体的な苦痛から救われる人たちのケースでは病気と呼んでも良いのでしょうが、すべての現象を病気とするには大きな問題があります。

TS(性転換症 Transsexualism )

 自分が別の性に属するという確信があって、そのような生活を送り、他人からもそう認知されたいという願望がある。肉体的な特徴もそれらしいものでありたいと願う。「ホルモン療法や外科的治療を希望する」と説明される場合もあり、要するに、お医者さんがホルモンや外科治療をすべきかどうかを判断するための分類。ホルモンは副作用をともなう危険なもので、それでも、あえて用いるという方法です。
 本人が希望するには、現代のホルモンや外科治療の知識がなければなりません。古い時代や後進国の人にはそういう希望はないでしょう。
 マスコミ情報の氾濫の中で TS を志向して肉体改造を始める人もいますが、より深い悩みと人生観をいだき、より女性らしい気持ちで、自然の肉体にとどまる人もいます。
 TSという言葉が普及した時代は、異性化の「願望」即ち肉体改造行動のように言われたいきさつがあったようですが、願望と行動とは別のもので、人々もさまざまであり、死語となりつつあるようです。

TV (1)(両性役割服装倒錯症 Dualrole transvestism )

 TS のような肉体の変化の希望はなく、日常生活の一部の時間を異性として過ごしたい人などというようなことが、過去において定義されました。
 パートタイムに制限されるのは、その人の現在の生活環境からくる制限なので、環境が変ればフルタイムになることもあるかもしれないし、1年以上もできないこともあるでしょう。パートタイムで「完全な装い」をする人の他に、フルタイムでパートの装いをする人もいます。そのような表面的な違いから区別しようとしてできた用語のようです。

GID (性同一性障害 Gender identity disorder )

 以上の2つ(TS, TV 1)のような傾向を「性同一性障害」と呼ぶことがある。

性同一性障害に関する答申と提言(ガイドライン第一版)1997
性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第2版) 2002
性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第3版) 2006 (当初のリンク、皆リンク切れ)

TV (2)(フェティシズム的服装倒錯症 Fetishistic transvestism )

「主に性的興奮を得るために異性の衣服を着用すること。……通常一点以上の物を着用し,しばしばかつらや化粧品を加え完全な装いをする。…… 性的喚起と明らかに結びついていることと,いったんオルガスムが起こり性的喚起が止めば,衣服を脱いでしまいたいという強い欲望が起こる…… 」ということらしいです。
 「完全な装い」のケースでは、TV1やその他と見た目は同じですが、その中身は、女装(じよそう)の場合でいえば男性の意識で性的興奮を求めるためのものという意味でしょうか? 「性的興奮」ということではなく、もっと静かに、芸術のように楽しんでいる人たちには迷惑な定義なのでしょう。

 TV と呼ばれる傾向の中に、両性役割服装倒錯症とフェティシズム的服装倒錯症の二つがあるのですが、両性役割服装倒錯症は性同一性障害に分類され、フェティシズム的服装倒錯症は別の分類(「性嗜好障害」)だそうです。

TG (トランスジェンダー Transgender )

 「〜倒錯症」という医学用語ではなく、当事者による自称から起った言葉で、TS的傾向やTV的傾向の総称のようにも、両者の中間の意味のようにも使われる場合があるといいます。
古いTV1の解釈では、日常的な異性化を「決して望まない」などと定義されたこともあり、また医療に訴えるものだけがTSだみたいなところもあったのですが、実際はそんな簡単にはわりきれないわけです。

◆GID 現代の問題点
他の「障害者問題」と同様の問題(人権福祉等)と形が変質しつつある。 医者の決めた枠内での生活が当事者の思考を作ってしまう。 芸能の人(NH)、両性的の人は、枠におさまらない。 同性愛との差別化が古い歴史をわからなくしている。 芸能や芸術学問が排除されてしまう。「自分の希望」を内省する能力のこと。 等々
「性同一性障害」は医学用語から法律用語になりつつあるのかも


 

(2)古い歴史をたどると、別の意味での「性別越境」がみられます。

 

成人儀礼で

 日本でも各地の祭礼習俗に残っています。「へこ祝い」といって、成人した男子が親戚筋の叔母などから赤い腰巻を贈られて身につける風習もあります。江戸の若衆の女装のような服装も通過儀礼の要素があります。盆踊での女装や男装も、これに近いものです。
 

神事や軍事で

 古い時代の男覡(女装の男子による巫女のようなもの)。また国王・天皇などの女装も神事や軍事を司る役割のためと思われます。軍事での女装も、勝負を占う神事からきたものらしく、男装の例では日本では神功皇后などがあります。戦国時代の小姓。お寺の稚児・小姓など。
 稚児など幼児の女装は、「神の子」、両性具有といった意味でしょうか。
 歌舞伎の女装は、古代の軍事組織での神事芸能に起源があるともいいます。芸能集団の零落した姿が陰間茶屋等等といったものとも。現代のニューハーフの人たちもそれらの末裔として独自の芸能文化が継承されてきたものと思います。

 古い歴史に、僧と稚児の同性愛ないし少年愛が語られることがあります。「男子だけの狭い組織」が原因でそのようなことが起ったのだろうと説明されることもありますが、起源はそういったものよりもさらに古いものです。あるいは逆に、特殊な人たちが寺に入ることによって救済されたケースは少なくないものではあるでしょう。
Hatopia