「ひされ野郎」は誤読です

ひまな江戸時代の『諸遊芥子鹿子』という本が昭和20年代(1952)に活字化(岡田甫:著)されたことがありますが、(原本には)次のような文があります。

「とてもに聞たし、はやり子には朝夕の膳部もさまざまととのへてすへそなへ、ひまな野郎には朔日にも鯰をすへぬといふがいかに」

当時のかげま茶屋などの話で、「流行り子」と「ひまな野郎」とでは、普段の食事の待遇まで違うといいますが、どうなんですか?、といった意味。
昼間は芝居を勤めるのが仕事の人たちですから、スターとそうでない者との待遇に差があるのは、特に芸能関係では致し方のないところでしょう。

「流行り」と「ひまな」の対比ですし、間違う可能性は低いと思うのですが、前述の活字本では「ひまな野郎」を「ひされ野郎」と誤読した箇所があります。原本は図のように「飛万那(ひまな)」を崩した変体仮名で書かれています。
江戸時代にはなかった言葉と思われる「ひされ野郎」が、一部のネットなどで流布してしまっているようですね。

ついでに、もう一つ。天保のころの『天野浮橋』という本の中の、歌菊というかげまのセリフに
「先を考へてみれば、心細いもので、親兄弟は上方にて十三の年わかれ、下りしより音も便りもなし」
とありますが、「親兄弟」を「親けん方(親眷方?)」と読んで変な造語を作るのも変でしょう。

★林美一編集「季刊会本研究9」(昭和56)を拝見する機会がありましたが、間違いなく「ひまな野郎」となっていました。林氏の著作はどれも信頼度の高いものです(2012.9.27)

Trackbacks

コメント

< 柳腰から「むっちり」へ | top | 蓮華草と白詰草 >