花物語と少女漫画

『花物語』という吉屋信子の短編小説集を少し読んだら、やっぱり泣けてしまうお話ばかりでした。
幸福だった幼年時代が過ぎ、突然襲いかかってくる不幸の数々に、家族は離れ離れに。けれども少女は、誰も怨まず、何も妬まず、つつましやかな生活の中に、やがてかすかな希望の光が見えてくるような、そんなストーリー。
こういうお話は、1960年代の少女漫画のパターンでもありました。あのパターンは、大正時代の「花物語」の中に既にひととおり詰まっていたわけなのですね。花物語は少女小説の元祖といわれるほどのものですから。

花物語には悪い人はあまり出てこないのですが、60年代の少女漫画には、意地悪でいじめ役の子も出てきました。日本の古い昔話にも、ただ執拗にいじめてくるだけの継母などがいました。そういうののない花物語は、モダンで洗練された近代少女小説といえるのかもしれません。
昔の少女漫画には恐い漫画もありました。古賀新一とか楳図かずおとか、なぜか夢中にさせてしまうものがありました。そういう土俗的といえるようなものと、モダンで美しく哀しい物語と、両方とも夢中になって読んでいました。

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