生物学と政治イデオロギー

2〜3日前にNHKテレビで、人間の精子全般が劣化していて、それは一夫一婦制が原因だとかいう珍説を披露していたらしいです。
そういえば、女性のからだの形の特徴について、オスにアピールして優秀な子孫を残すためだとかいうことを本気で言ってた学者も昔はいました。これはオスからみればそういう特徴の顕著なメスこそが優秀なメスだということになるので、ぜんぜん学問的ではなくて、男性の学者が自分の好みを表現しただけといわれてもしかたないです。
一夫一婦制うんぬんの話も、別の形態として一夫多妻や乱婚などが念頭にあるらしく、そういう映像メディアなどを見ての個人の羨望を表現しただけなのかもしれませんね。

一夫一婦は競争がないからだめなんだという主張もあったらしく、これは今の新保守主義とかいわれる政治イデオロギーを当てはめただけのようですね。
こういった生物学者の主張は、岩波新書の『性転換する魚たち』という本でも見ることができます。その本は、ソ連の崩壊後、強いのはアメリカ一国だけいう時代にぴったりの本です。
性転換する魚といっても、いちばん多いパターンは、群れの中の一匹の強いオスが多数のメスを率いて、そのオスが倒れると、メスの中でいちばん大きいのがオスに性転換するというものです。こういう現象を説明するのに、1980年代までは、厳しい自然の中での種の保存やら自然との調和などという広い観点から説明するのが主流だったそうですが、90年代にになって、個体にとってコスト的に合理的だからという説明になっているのだそうです。一匹のオスにとっても多数の子孫が残せて、個別のメスにとっても強いオスの庇護のもとに強い子孫を残せるのが合理的なのだそうです。一匹の強いオスの話は、90年代以後の政治イデオロギーそのものになってますので、魚にとっては迷惑な話です。一夫多妻制は伝説的に語られるものは別として、「制」として認めることは人類史そのものの否定になるます(古代の婚姻)。

★補足 科学者が科学的な冷静さを失って、人間の日常の経済活動や政治的人間関係までを自然界に投影して見てしまうこともあること、しかもそれが理論的粉飾をともなって権威であるかのように宣伝されることがあること、それがテーマでした。多数のコメントをいただきましたが、重要なテーマが曖昧になること、やや荒れ気味だったこと、コメント者に歴史的事実の誤認があることなどから、コメントをクリアしました。

Trackbacks

コメント

< 「絵葉書」という歌 | top | 阿闍世コンプレックス >