ジェンダーと一人称代名詞

現代の日本語の一人称代名詞について、関東地方での使われ方を考えてみます。

女子は、幼少時にアタシ(またはワタシ)を使い始めると、ほぼ一生その言葉だけを使い続けるようです。
男子は複雑です。幼少時にボクまたはオレを使い始め、中学生のころオレがかなり優勢となります。高校生以上ではオレとボクを使い分ける人が多くなり、大学生や社会人になるとさらにワタシを使い分けるようになります。昔の軍隊ではジブン(自分)というのもあり、今も使われます。

現代の日本人男子は、これほどの使い分けを強いられ、それは特に思春期のころの自我の形成に影響を及ぼすこともあるのではないかと思います。
小学生のころボクと言っていた子が、中学生になってすんなり仲間と同じオレと言えれば良いのですが、屈折した気持ちになる男子も少なくないようです。そのような男子は自閉的な心理に陥るのではないかということです。

けれど昔の例では、正統派の江戸古典落語の世界では、庶民の一人称の言いかたは現代とはだいぶ異なります。子どもは男子も女子もアタイです。大人になれば皆アタシなのですが、長屋住まいの男性の中にはオレと言う場合があります。
アタイやアタシは、関西のワテやアテと通じるものなのでしょう。落語家は現代でもアタシと言います。
オレは、江戸周辺の関東地方で、男女ともに使われた言葉が移入されたもののようです。東北地方のオラと通じるものです。仕事を求めて江戸に移住して来た人の言葉ということになります。
元は単純だったようです。男言葉と女言葉の差も、あまりなかったようなのです。
(落語の長屋の職人さんの場合、外向けには「アチシ」とか「アッシ」とも言っています)

明治時代以後になって、男子は複雑な一人称代名詞の使い分けをするようになったわけです。女子はというと、女言葉を独自に洗練させてきました。
こういう流れを、文化の洗練として賞讚する見方もあるようですが、少々の疑問も感じられます。女子は従来の女言葉をだんだん使わなくなっている傾向があると思います。男子も落語家のようにアタシだけで通せたら良いと思うのですが……

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コメント

まりっぺ : 2006年12月19日 12:06

うちの実家の場合
うちの実家の場合(長野県北部)は今でも50代以上の女性は「オレ」を使います。それ以下の女性は「ワタシ・アタシ」
男性はもちろん「オレ」ですが、高齢者は「オラ」も使いますね。

鳩子 : 2006年12月19日 14:15

東京近郊地域の場合
長野県や山梨県は関東とあまり変わらないということなのでしょうね。
こちらではオラは、お年寄りが「オレは」を縮めて言うときだけ使ってる感じです。

都心から数10km以内の関東の旧農村部では、よく考えると女性も複雑です。
地域によっては、オレは60代以上にときどき見られますが、アタシも多いです。育った家庭環境の違いでしょう。その世代でアタシと言う女性は息子にボクとしつけたと思います。
オレと言ってた女性も、娘が年頃になったころ娘にいやがられて直した人も多いようです。昭和30〜40年代の女の子はアタイと言ってました。今は若い女性のあいだでは方言は壊滅状態なのは、時代の流れなのだと思います。

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