神隠しの午後

子どものころの好きな遊びに木登りがありました。
家にあった古い椿の木は、地上から2メートルくらいのところの枝2本が曲がっていて、縦横30センチくらいの菱形の枠の形をしていました。小学生の私は、その枠をくぐり抜けてもっと上へ登ってゆくことができました。木の上から"下界"を眺めながら、ぼんやり過ごすのが好きな子どもでした。
ある日の午後、木の上に登っていたら、下で母や家族が、私がいないといって探している声が聞こえました。でも私は木の上から降りたくありませんでした。かなり時間がたってから、私はこっそり木から降りて、何食わぬ顔をして家の中に入りました。神隠しにあったのかと思ったと言われて、叱られました。
高校生になったころ、その木に登ってみたとき、あの枝の枠の中には、頭は入りましたが、からだはもう入りませんでした。

別の話ですが、納戸(なんど)で古着のワンピースやスカートを着て遊んでいたとき、姉が私を探して近づいて来るのがわかりました。私は押入れの中に入って、音をたてずに静かに戸を閉めて、息を潜めていました。姉の呼ぶ声に返事はしませんでした。そのときどういうふうに思われたかはわかりません。
(写真は山茶花の前で)

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