男心と秋の空


「男心と秋の空」といいます。変わりやすい秋の空にたとえて「男心は……」と言われたわけですが、現代では「女心と秋の空」ともいうようです。どちらが正しいかという議論もあるようですが、今は逆に「女心は……」を支持する人が上まわっているという調査結果もあります。

「女心と秋の空」とは、女性からみれば、微妙な女性心理がわからない鈍い男が多いという皮肉をこめてのものでしょうし、男性からみれば、なかなか思い通りにならない恋の嘆きといったところでしょうか。現代では「男心と秋の空」というと、微妙な男心というより浮気の話に連想が行きやすいので、「女心と秋の空」といったほうが波風が立たなくてよいのかもしれません。

ある作家のエッセイによると「女心と秋の空」という言い方が広まったのは、大正時代に田谷力三が歌った「女心の唄」という歌が大ヒットしたことがきっかけだそうです。「風の中の羽根のように、いつも変わる女心」と歌われるイタリアオペラの中の曲で、女の作り笑顔や涙にはだまされてばかりだという男の嘆きの歌です(イギリスの諺に似たようなものがあるらしいです)。こういう心理は、今の男性が「女心と秋の空」というのとほとんど同じであるわけです。

ところで秋の空は三日ともたない、などといわれて変わりやすいものとされるわけです。けれど二〜三日はもつわけです。「女心の唄」のような恋の駆け引きでは、女心は一日のうちに何度もくるくると変わったりしますから、やはりことわざ辞典にあるように「男心と秋の空」「女心は猫の目」と言うのが一番合っているのかもしれません。

「男心と秋の空」という昔の言い方は、男が親切にしてくれたからといってその気になってはいけないという娘への戒めの意味が多かったようです。ことわざとはやはり戒めや教訓を含むものだからです。あるいは「秋」に「あきらめ」をかけて男への未練を断ち切るための慰めの意味にもなります。

明治30年ごろ流行した「さのさ節」の一節です。
 ♪あなたそりや無理よ、二三日なら辛棒もしようが、
  一年二年の其の間、便りもせずにネー居られませうか、
  まして男心と秋の空、サノサ。
この歌は、芸者さんと1年か2年に一度しか来ない男のやりとりなのでしょう。1年か2年ぶりにしか来なくても大事なお客といえば、参勤交代の武士か、季節の物を運ぶ船頭さんその他ということになります。宴席でのそういう男からの空手形のような言葉への機転をきかした返答といったところでしょうか。宴席ですから言葉遊びのようなところもあるわけです。
(本当はもっと粋な使い方の例がないかと思っています。馴染みの客の足が数日遠のいた程度のことで女から恋慕と焼餅半々くらいで大げさに言うような感じとか……。)

オペラで「女心は……」と言葉にするのは男性ですから、西洋の文学が男性主導のものだったことを想起させます。
日本で「男心は……」と口にしたのは女性たちであって、それが俗謡や大衆文学などで伝わってきたわけですから、文学史における女性の役割の重みが違うわけなのでしょう。
「男心は秋の空」とは男性が口にするものではなく、まして男性自身が「だから男の浮気は必要悪」などと居直るものでもありません。

Trackbacks

男心と女心と秋の空 : ホントは友達がほしいだけなんです : 2006/7/25 21:33

「女心と秋の空」個人的な話ですが、他人という心の読めないものを扱うのでさえ大変なことなのに、それが女の子だととりわけ大変です。昨日から今日にかけて、すごく扱いづらい女友達と遊びました。前に遊んだのが2年前だったので、少しは変わったかなーと会っ


コメント

男女平等△推進員 : 2005年6月27日 09:27

鳩子さんって、ほんとうに不思議!
広々とした草原の鳩子さん、北海道らしい風景です。鳩子さんは、どんなお仕事をされているのかしら?どんな生活をされているのかしら?たくさん本を読んでいるのかしら?などと想像するのは楽しいです。不思議すぎる実存、なんだか「センと千尋の神隠し」の世界に住んでいらっしゃるような、勝手な妄想をしています。

鳩子 : 2005年6月28日 03:00

関東平野も広いです
この記事はジェンダー論としては切り口はまったく甘いですね。

日向充 : 2005年10月15日 23:24

http://hinatamitsuru.cocolog-nifty.com/blog/
面白かったですー。
そうかー。
ずっと良くわかってなかったんですよ。「男心と秋の空」「女心と秋の空」どっちがどうなのかって。
興味深く読ませていただきました!

鳩子 : 2005年10月16日 14:13

男心と女心と
日向充さん
コメントありがとうございます
>「男心と秋の空」「女心と秋の空」
どっちが正しいかということでなく、どっちの言葉を使うにしても、粋に使えるようになれば最高でしょうね。

みっちんぐ : 2006年7月25日 21:38

秋の空
はじめまして♪

男心と秋の空について調べていたらここへたどり着きました。
秋の空は「二、三日はもつ」をはじめ、文章が面白くて素敵です(^-^)

こちらの記事に、リンクとトラックバックと貼らせていただきましたので、もし駄目なら仰ってください。

ではまた見にきます♪

鳩子 : 2006年7月26日 00:11

微妙ですよね
トラックバックありがとうございます。
男と女ってビミョーですよね。
おたがい理解しあって仲良くやるのがいちばんなんでしょうけどね。
(*^o^*)

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