小公子

 『小公子』より (川端康成、野上彰、共訳)

「……ぼくがまだ小さかったとき、大好きなママといっしょに出かけて、きれいな、よくはずむボールを買っていただいたんです。そのボールを持って歩いていると、はずんだ拍子に馬車や馬の通っているまんなかへころんでいっちゃたんです。ぼく、がっかりしてわあっと泣いちゃいました−−ぼく、とても小さかったんです。女の子のような服を着ていたんです。……」
「……あっしゃぁ、あの子のボールを乗り合い馬車の下からひろってやったんでさ。それをあの子は、けっして忘れねえで、おふくろやおんばさんと下町へ出てくるとね、きまって声をかけてくれるんだ。「やあ、ディック!」ってね。まるっきり大の男の友だちづきあいでさ。それがひざっこくらいしかない、ばったみたいなちびすけで、女の子のきものを着ているじぶんですぜ。陽気なちびすけで、いいめが出ないときでも、あの子と話していると、よくなっちまいますぜ。」

 どうしても、こういう話は、いいとこのおぼっちゃんの話になってしまうのですが、小公子の話は大好きでした。(4/19)

Trackbacks

コメント

< 三脚を高く…… | top | コートの春 >