カメラの前で微笑んだ日


数人の女子中学生のなかに、大人と会話するのに微笑みを絶やさない子が一人だけいました。聞けば彼女はクラス委員だといいます。そういう子だから好感をもたれるのだろうと思いながらも、ちょっと大人びた子なんだろうなとも思ってしまったのは、他の子たちがあまりに無表情だったからです。
 小学生や幼稚園の子どもは、カメラを向けられても、きょとんとした顔をするのが普通です。最近は少しは違うのかもしれませんけれど、意味もなく微笑みを浮かべることができるのは、大人であり、女性たちが比較的多いのでしょう。
 と、思いながら、ふと自分の幼い日の写真のことを思い出しました。子どものころの私の写真は、いつもかすかに微笑んで写っているのです。写真写りの良い子だと言われていました。でも本人には微笑んでいるという自覚はありません。道を歩いているときなど、ときどき年上の男の子から、「さっきオレの顔を見て笑ったろう!」と詰め寄られたことが何度かありました。そう言われると本当に困ってしまうので、ていねいに弁解しましたから、暴力をふるわれたりしたことはありませんが、その後、その男の子とすれちがうときは、とても恐い思いがしました。
 実は最初に述べた女子中学生について、少しませた子のような印象を持ってしまったのですが、よく考えてみれば自分の子どものころもそうだったのかもしれません。別に世間ずれした子ではありませんでした。ふだんの生活もそんなに楽しいことばかりあったわけではありません。でも、なぜか、遠い日の私は、どこかに向かって微笑みかけているのでした。

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