初めてのブラ

 あたしが六年生のころ、いちばんショックを覚えたのは、いつのまにか身長が姉を越えていたことです。それまでは一緒にいることも多く、仲の良かった姉とあたしとは、何かが違うことに気づかなければならなくなったのです。
 中学生になると、同級生の女の子たちの胸のふくらみが気になるようになりました。それにひきかえ、あたしが内緒で女の子になるときの胸は、実に貧弱なものでした。
 女の子たちのブラウスの背中から下着が透けて見えることもあります。そういえば姉も胸がふくらんでいて、ブラをしています。運良くあたしは家の奥の押入れの隅に詰め込んであった包みの中から、姉の古いブラを見つけ、これを着けてカップの中に何かを詰めることを思いつきました。あたしは自分の靴下を丸めて入れてみました。そうして女の子になって鏡を見てみると、なんとか年ごろの女の子のスタイルに見え、ほっとした気持ちになれたのです。
 そのころあたしは、夜、ふとんの中で、指で自分の乳首をいじっていたことがあります。錯覚だったのかもしれませんが、指に小さいしこりのようなものを感じたことがあります。その小さなしこりが、二、三ヶ月もするとだんだんふくらんでくるのではないかと思いました。それはちょっと怖いことでもありましたが、新聞ではスポーツ競技で優勝した女子が検査を受けたら本当は男子だった(いわゆる半陰陽だった)という記事を読んだことがあり、その逆のこと……つまり本当は男の子でなくて女の子だったということが、自分のからだに起こるかもしれないと思ったのです。あたしは眠れない夜を何日か過ごしました。
 数日後、たぶんあたしに他に熱中するものができたのでしょう。他のことに熱中した途端、眠れなかった夜のことは忘れてしまっていました。何ヶ月かして、あの眠れなかった夜のことを思い出し、ふとんの中でまた乳首をいじってみました。小さなしこりのようなものは、特には感じられませんでした。その後もときどき思い出しては指でいじってみたのですが、とうとうあたしの胸がふくらむことはありませんでした。

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