「腰が本」の姿勢と動作

 小笠原流で、姿勢や動作について、こんな言葉があるそうです。

「腰は本である。腰よりして胴、胴よりして肩、肩よりして頭、肩につきたる肘、肘につきたる手、また腰よりして股、股につきたるすね、すねにつきたる足と、この一身の内、本末をわきまえ、その本から直す心得あるべし。自ら末の筋骨ろくになるものなり。」

 ……私なりに解釈すると、たとえば机の正面の椅子にすわって、机の右端に置いてある鉛筆を手に取るとします。このとき首だけ右へ向けて見て、右腕だけが動いてさっと取るのは、綺麗ではありません。腰から胴〜肩〜肘〜手と、からだがしなるようにやわらかく動いて手に取るのが綺麗です。そうすると、上体は取るものの方向へ半分向くようになりますから、首も同じ向きになって首は動かさなくても目的の物は見えます。取るものがもっと重いものなら、からだ全体をその方向へ向けないと、脇腹をひねったりします。
 こうした動きも、現代では女性のほうが綺麗にできています。ただし、女性のお辞儀の仕方で、腰から上がしなるような動きというか、からだが先に前に傾いて、そのあとで顔が前に伏すようなお辞儀のしかたは、良くは言われません。
 女性は男性よりからだの重心が低く、腰部が中心部なので、ウエストから上は男性の肩から先のように一体となって動くのだと思っていました。走るとき腕だけ振るのが男性で、ウエストから上全体をひねるように左右に振るのが女性的と思っていました。確かに男性は前腕部が大きいので腕だけ振っても女性と同じ運動効果なのでしょう。そうした体形の性差による違いはあるのでしょうが、小笠原流では、腰〜胴〜肩〜肘……といった一見女性的に見える動きが基本だというのです。女性的なものを求めて行っても、もともと理想的だった男女共通のものへと解消されて行くことばかりです。
 からだごと対象物に向かう、というのは、野球の守備でからだの正面で捕球するというのと似てなくもありません。女性向けエチケットの本には、相手の話を聞くときは、首だけ相手に向けるのではなく、からだごと相手の方向に向かってすわるということがよく書かれます。それもおそらく女性に限ったことではなかったのでしょう。

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