秘密のヒロイン

 あたしが子どものころ、ときどき内緒で女の子になっていたことは、秘密のことでした。幼い子どもがなぜそれを秘密にしなければならないと判断したのか、ずっと疑問に思っていました。思春期以後に多くの人が感じるようなうしろめたさのようなものは、なかったのです。ただ姉のパンツをはいて叱られた記憶があるので、それでいけないことと思ったのかもしれませんが……。
 昨年の秋、掲示板で子どものころのテレビ番組のことが話題になったとき、本当の理由らしきものがやっとわかりました。それはたとえば、普段はクラーク・ケントと名のるただの新聞記者であっても、いざとなればスーパーマンとなり、しかもそのことは絶対に秘密にしなければならないことなのでした。ヒーローであることを秘密にしなければならないというドラマは当時たくさんありました。8マンの東八郎、ウルトラマンもそうですし、時代劇でもお姫様が旅芸人の姿で曲芸をするというのは美空ひばりの映画に多かったです。思い出せないドラマがもっとたくさんあったと思います。
 そういうドラマから、人には秘密にしなければならないものがあると思うようになったのかもしれません。秘密を守ることが少年の心の快感となり、秘密にすることによってヒーローやヒロインと同化できるような……そういう少年時代だったのでしょう。
 ※ 今の商人姿の水戸黄門や、町人姿の遠山金四郎にも"秘密"があります。昔から好まれる物語のパターンなのでしょう。

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